埋蔵文化財発掘レポート
欠き割られた土器
 出土した土器がかつてどのように使われていたかは形や大きさ、使用の痕跡、出土した時の状況など総合的にみて判断しますが、これがなかなか厄介な問題です。例えば、意外な使用痕がついていて驚くことがあります。今日のわたしたちの生活でも、本来の目的外に道具を使うことはよくあることです。
 8月号でお伝えした喜志西遺跡の方形周溝墓(弥生時代の墓地)から出土した遺物の中に特徴のある割れ方を示す壷がありました。住居跡などの生活の場から出土するものと違って、墓地から出土する土器には底近くに穴をあけてあるものが多いことがわかっていますが、今回出土した壷は底近くに穴をあけ、口の周辺にも故意に約3分の1程度打ち欠いてえぐりが入れてありました。容量1.5リットル程の小型の壷で、櫛状の工具で簾のような紋様が1筋、直線の紋様が6本描かれています。同じような口の周辺を打ち欠いた土器は東大阪市の巨摩廃寺遺跡の方形周溝墓でも見つかっています。この遺跡でも、墓1か所につき1点ずつ計3点の欠き割りのある土器が見つかりました。外面の煤の付着状態や表面が赤く変色し、はげた部分もあることから液体を沸かしたもので、湯棺のような儀式があったものと考えられています。喜志西遺跡出土の壷にはこのような使用の痕跡が残っていないため用途を確定できませんが、巨摩廃寺遺跡と同じような出土状況であったことから墓前で何らかの儀式があったことが想像されます。
(平成5年11月号)