埋蔵文化財発掘レポート
めずらしい井戸
 発掘調査によって井戸がみつかるというのは、どんな意味があるのでしょうか。
 狭山河南線の築造に伴う中野遺跡の調査では、15基の井戸が見つかりました。そのうち1基が非常にめずらしいつくりをしています。  井戸は飲料水確保のため、弥生時代の前期にはすでにつくられていました。奈良県の唐古遺跡では、丸太をくりぬき地中に埋めた井戸が発見されています。木材の井戸枠は出土例が多く、曲物(まげもの=薄板を円形にした容器)を枠に使った井戸もその一例です。他には、石や羽釜(はがま)を使用した井戸も数多く出土しています。
 今回のこの井戸がめずらしいのは、井戸枠に瓦が用いられている点で、直径1メートル、深さ1.7メートルの井戸の中ほどには瓦が積み重ねられ、その上と下では石組みが施されていました。井戸の年代は使われている瓦から鎌倉時代以降と思われますが、古いものでは奈良時代の瓦も入っていました。さらにその中には、めずらしい梵字(ぼんじ)のついた軒丸瓦が含まれており、梵字が古代インドの仏教用語に使われる文字であることから、この場所にお寺があったのではと考えられます。また、煤(すす)のついた瓦が入っていることから、火災に遭っていると思われます。それにその井戸は、古墳時代の溝に埋まった、水の湧きやすい所に掘られています。古代人の知恵でしょうか。
 このように、井戸は過去を知る大きな手がかりとなるのです。
(平成2年7月号)