埋蔵文化財発掘レポート
寺内町最古の茶室
 現在、修復工事が進められている旧杉山家住宅は、18世紀初頭(江戸時代)の姿によみがえろうとしています。
 この旧杉山家住宅は、寺内町が建設された頃(15世紀末)からの旧家で、絵図等が残され当時の様子を伝える貴重な文化財といえます。
 修復工事に伴って行われた発掘調査では、嘉永三年(一八五〇年)の絵図どおりの遺構が見つかりました。
 杉山家年中録によると天保十年(一八三九年)に茶室が建てられたと記録されています。この茶室の造りは、武者小路千家の官休庵(かんきゅうあん)を参考にした二畳中板と呼ばれるものですが、その茶室の排水施設が今回の調査で明らかになりました。
 まず穴を掘り、その中に栗石(こぶし大の石)を敷いています。水はけを良くするためでしょう。その上に備前焼の擂鉢(すりばち)を伏せ、さらにその上を漆喰(しっくい)で固めています。擂鉢の底には直径1.7aの穴があけられ、そこから水が下に流れる仕組みになっています。
 最近各地で発見されたり復元されている水琴窟(すいきんくつ)は、旧杉山家住宅のものと基本的に同じ施設です。水琴窟はおおきなカメを伏せて、水滴の落ちる響き(琴の音のように聞こえる)を楽しむところからこの名前がつけられました。江戸時代中期から明治じぢあにかけての造園技術の一つとしてさかんに作られたようです。
 旧杉山家住宅の排水施設は、鉢の高さが低いために水の反響音があまり出ないことから水琴窟とは違い、より実用的なもので、水琴窟の前身と考えられます。
 寺内町で茶室で現存する旧家は少なく、なかでも旧杉山家住宅の茶室は最も古い時期に造られたといえそうです。
(昭和62年8月号)