わたしのまちの文化財
登録有形文化財『杉田家』
 わたしたちのまわりには、残していきたい風景が意外にたくさんあります。ふたたび造ることのできないものなどは、立派な文化財です。しかし、最近の開発や生活様式の変化によって、多くの近代建築が失われています。そこで、平成8年に、これらの貴重な建造物を守るため、文化財として国に登録する制度ができました。この制度は、原則として建築後50年を経過し、国土の歴史的景観に寄与しているものや、造形の模範となっているもの、または、容易に再現できないものについて、文化財としての価値を評価し、保存していこうというものです。
 市内には、1月現在で3棟の建造物が有形文化財として登録されています。今回紹介するのは、市立中央図書館、中央公民館の南西にある杉田家住宅です。
 本邸は昭和4年に建てられました。緑釉洋瓦葺寄棟屋根に、正面は玄関ポーチが張り出したクラシカルな西洋館のたたずまいで、その玄関ポーチの構成と装飾意匠はセセッション式(※)の大変個性あるものです。大小の応接室の質高い内装、スチールサッシの活用など建築当時としては大変近代的な技術を持った建築家の関与を思わせるものがあります。また、1階の10畳座敷や2階の8畳座敷も幅の広い縁側を付した和室で上質の用材が用いられています。東面に和式の内玄関や南邸に面する座敷と縁側の周りは、木格子の欄間を付した大きなガラス戸、主屋と庭を挟んだ奥には白壁に日本瓦葺きの2階蔵が建ち、和洋をうまく組み合わせた住宅です。
 残念ながら直接道路には面しておらず、低い石垣の上に高塀で囲まれており、通常望見できる範囲は限られています。また、公開はしていませんので、無断で邸内に入ったりしないようにしてください。
※セセッション:19世紀末にドイツ、オーストリアで興った芸術の革新運動。過去の芸術様式から分離。機能性・合理性を重視し、建築デザインに大きな影響を及ぼしました。
(平成13年3月号)